檜山真有
展覧会名:東京⇄沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村 会場:板橋区立美術館
会期:2018年2月24日〜4月15日
どの街で生きるか、誰と生きるか。組織に左右されないアーティストたちにとってこの問題は自分の実存とも言える。 池袋モンパルナスは、1930年代の池袋に点在していた現在でいうところのアーティストコレクティブの拠点を指す。モンパルナスと名がつくほどアーティストにとって天国であるような場所も、戦火により離散することとなる。そこに出入りしていた沖縄のアーティストたちはやがて沖縄県那覇市に美術村をつくり、そこを拠点に活動するようになる。これがニシムイ美術村である。
池袋モンパルナスに出入りしていた作家の豪華絢爛たることや。佐伯祐三が下落合を描き、長谷川利行が新宿を描き、松本竣介がおおよそ現在の西武池袋沿線だと考えられる郊外を描く。その他にも靉光、作品こそ展示されていなかったが史料によると現在アーツ前橋で展示されている横堀角次郎も出入りしていたようだ。 ニシムイ美術村には、北川民次、藤田嗣治なども出入りし、沖縄の風俗や風景を作品として残している。
アートというのは同時代の意識を最大限にまで個人的な、ローカライズなものとして、咀嚼して吐き出されたものだとも言える。 この同時代の意識をどこまで同じ時代を生きる個々としては、あまりに孤独であるアーティストと共有できるのか。 日本美術の誕生と共に、アーティストコレクティブは存在していた。 そして、池袋モンパルナスとニシムイ美術村はこれに移動という重要な要素が含まれている。アーティストたちは「時代」を確かめたくて、移動する。 どの街で生きるか、誰と生きるか、誰のためにどこへ向かうのか。何かをつくる問いの根源はこれらに尽きるのかもしれない。
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