展覧会名:バーチャルの具体性 The Virtual Concreteness
会場:The 5th Floor
会期:2021年5月16日 〜 6月3日
グループ展「バーチャルの具体性」は、デジタル時代の技術的発展やコロナウイルス感染拡大に伴い重要性が注目されるバーチャルの複雑性と可能性に迫る。
本展は、旧花園寮の5階にある4部屋をギャラリースペースに改装したThe 5th Floorで開かれた。明白に記されてはいないが、各部屋には小テーマが与えられており、展覧会全体の空間を通じて一つの流れが形成されている。その意味で会場の構造を最大限に活かした展示であった。1つ目の部屋では現実においてバーチャルが及ぼす社会的影響(原子力による放射性廃棄物や電子機器の廃棄物)とその倫理性に注目し、2つ目の部屋は、例えばゲーム内のデジタル空間といったように、非物質的なバーチャルがハードウェアといった物質によって存在していることを指摘する。3つ目の部屋は記憶や過去を「デジタルに先行するバーチャル領域」として捉える。
この3つ目の部屋に関して、物質性を伴うバーチャル領域を、記憶と夢という心理学的・生態学的現象と結び付けている点が興味深いと感じた。1960年代日本のコンセプチュアル・アートを代表する松澤宥の作品《プサイの死体遺体》(リトグラフ、1964年)は、近代以降に展開されて行った非物質性の議論や集団意識の歴史的背景にも目を向ける。
最後に、屋上へ進むと一見してグリーンハウスを想起させる3つの「夢を見るための装置」が並んでいる。中へ入り込むと、静かに左右に揺れるゆりかごを前にすることになる。最も身近な次元で、バーチャル領域は私たちの中に存在する。
微かに揺れる百合を見上げながら、目を閉じる。
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