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Seoul Mediacity Biennale 2018

執筆者の写真: ゴンちゃんゴンちゃん

権祥海


展覧会名:Seoul Mediacity Biennale 2018

会場:ソウル市美術館

会期:2018.09.06 - 11.18


 今回のソウルメディアシティービエンナーレは、副題に示されているように「良い生(ギリシャ語の「Eu Zen」、英語ではGood Life)」の多様な条件について考える過程を含んでいる。具体的には世界的な危機の状況の中で「良い生」という目標意識を、「アゴラ(Agora)」という集団的知性を通して獲得していく過程と言える。本展示における「アゴラ」の中心をなしている要素としては、展示期間中行われる様々な「コレクティヴ」による観客参加型の活動とレクチャー、ライヴパフォーマンスなどのイベントプログラムがある。 本展示に参加する「コレクティヴ」はアートの領域だけではなく、社会問題や政治、経済の状況、科学技術を導入した作業など、活動分野や方法が多岐に渡っている。その中には、活動に関するアーカイヴを展示室に並べるだけではなく、展示期間中に参加者たちによって作られる作業も多い。そのため、展示室には作品は置かれておらず、討論のための椅子だけが置いてあったり、コレクティヴの活動過程をアーカイヴィングした空間が提示された場合が多く見られる。 イベントプログラムは、「How to Live」, 「How to Act」, 「How to Play」という大きな枠組みとして構成されており、市民たちや様々な国からの観客のために開かれた空間として企画された。企画側の言葉によると、「アゴラ」での討論、参加型プロジェクト、ライヴ・パフォーマンスなどのイベントをビエンナーレの副次的な要素ではなく、主要要素として構成することに他のビエンナーレとの差別性を置いてあるという。興味深いことは、キュレーションチームのメンバーの多様性であり、一人のインディペンデントキュレーターを除けば、政治経済専門家、出版物企画者、ダンス批評家で構成されている。(その中でパフォーマンスや観客参加型のイベントプログラムはダンス批評家キム・ナムスが担当している) 本ビエンナーレで「良い生」とともに議論の対象となっているのは、「クリエーティブで未来志向的な価値」である。展示での集団的知性には、人間だけではなく、人間によって作られた人工知能やテクノロジーも一つの構成員として考えられている。人類が目の前にしている危機を、共同の智とテクノロジーを通して乗り越えようとする点で思考の方向性は、未来を楽観する方向に向けられていると思える。これは、人工知能の現在の姿と、未来に起こりうる状況についての作業、科学技術を用いて諸問題を解決しようとする作業から確認できる。

 今回のビエンナーレが含む問題意識は、集団とテクノロジーを通して未来を克服していくことであり、それは展示の中で結果ではなく過程として提示されている。展示期間中たった一日しか参加できなかったが、本展示が会期中、「良い生」ついての思考過程をどのように見せていくかは見守るべきであろう。







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